名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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ブログ「天白で有機化学やってます。」 ブログ「天白で有機化学やってます。」

オープンキャンパスやります!&化学・物質学科のYouTubeチャンネル!2025/07/25(金)

来週末はオープンキャンパスです! 天白キャンパスと八事キャンパス同日です。

来年度から、応用化学科は「化学・物質学科 応用化学専攻」と衣替えします。現在の材料機能工学科と連携して、「化学・物質」についてより幅広く学ぶことができるカリキュラムを立てて、新しい入学生を迎える準備をしています。

今年も、「共通講義棟東」という建物の2階で研究紹介をやっております。学科の教員・学生・大学院生がお待ちしております。進路について、勉強のやり方について、キャンパスライフについて等々、何でもご質問お受けします。ぜひご来場ください。また、「化学・物質学科 材料機能工学専攻」もすぐ近くで研究紹介を展開しています。そちらも合わせてご覧ください。

例年人気のラボツアーも実施します。研究室の設備などを見学したい方は、ぜひご参加ください。整理券は朝10時からの配布です。例年、午前中の早い時間に、午後の分も含めて埋まってしまうことが多いです(10時前から行列ができます)。整理券をなるべく早めに取りに来てください。

ついでに宣伝です。「化学・物質学科」の YouTube チャンネルができました! ぜひチャンネル登録をお願いします! 私も出演してますが、なぜか再生回数が圧倒的に少ないです(苦笑)

LaTeXで論文を書いた2025/07/24(木)

先日、「投稿論文を LaTeX で書き直す」という記事を書きました。その時は、せっかく書き直したのに結局使われなかった、という悲しいオチになったのですが、LaTeX で化学論文を書くことに一定の手応えは感じました。そこで、頑張って新しい論文を一から LaTeX で書いてみました。プレプリントとして公開しています(DOI:10.26434/chemrxiv-2025-k8jhs)。

お前は LaTeX を使うために論文書いとんのか?手段と目的が逆転しとらんか??と激詰めされそうですが、実のところ、私は昔からそういう気配がないでもないのです。大学院生のとき、まだ Windows が存在してなくて Mac が高嶺の花だった時代、私は「論文を書くのと平行して自作のワープロソフトを開発する」というアホみたいな活動をしておりました。当時使っていたパソコンはシャープの X68000 で、「ただのゲームマシンだ」とバカにする人も多かったのですが、当時これほどプログラム開発に適したマシンはそうそうなかったのです。結局、給料をいただく身分になって Mac を購入した後は、その自作ソフトは全く出番がなくなり消えてしまいましたが、それを使って書いた論文はちゃんと残っています。閑話休題。

さて、1本論文を書いてみると、いろいろ気づくことが出てきます。

  • 参考文献の管理はめちゃくちゃ楽。途中で参考文献を増やしても、番号のつけ直しが全く必要ない。Word の脚注機能でも一応できるのだけど、同じ論文を2箇所で引用するときが面倒。また、Word の内部で脚注の情報がどのように管理されているのか、イマイチわかりづらく、不安が大きい。(経験上、このように複雑な内部構造を持つデータは、プログラムの不具合でデータ消失のトラブルが起きやすい。LaTeX のデータは単純なテキストファイルなので、原因不明のデータ消失が起きる確率は極めて低い。)
  • 化学式は \ce{...} で書く。下付きなども自動的に処理してくれるので非常に楽。
  • 指定した幅に収めてくれるはずなのだが、ときどき職務放棄して派手にはみ出すことがある。

    ハイフンを含む単語の途中で改行できないからだと思うのですが、長い化合物名が文中に出てくると、この現象が高い確率で起きてしまいます。強制的に \linebreak を入れて対処してるんだけど、そんなもんなんかな? もう少し合理的な方法ないんですかね??
  • lualatex, pbibtex, lualatex, lualatex の順に走らせること。pbibtex の後にもう一度 lualatex を走らせないといけないのはわかっていたのですが、さらにもう一度走らせないと、図の番号が正しく振られないみたいです。
  • PDF を作るのに要する時間は、2カラム8ページ程度の論文で、30秒ほどでした。まあこの程度なら、十分待てるかな、と思います。

今回の論文の内容については、まだいろいろ技術的に詰めないといけないところが残っています。合成の再現性を確かめるとか、元素分析を合わせるとか(ため息)。合成化学の論文は、ここのハードルが高いんですよね……ぼちぼち進めていきます。

RS表記の順位則2025/06/25(水)

1年前期配当「有機化学基礎」の講義を担当しています。先日、立体化学の回を済ませました。不斉炭素の立体配置はなかなか面倒で、平面上に描かれた分子を空間的に見る能力を身につける必要があります。この能力には大きな個人差があって、ほぼ説明なしにすぐに納得する人と、非常に時間がかかる人とがいるように思います。時間がかかる人に向けて、「透視図の見方」をなるべく丁寧に伝えるように心がけています。

さて、この単元での鬼門の一つが、RS表記です。不斉炭素のR/Sを決めるためには、まず4つの置換基の順位を決めなければなりません。次のスライドを出して説明します。

順位を決めるのは、原子番号です。スライドの(2)にそう書いてあります。ところが、この説明だけだと、「分子量の順番」と勝手に解釈する人が、けっこうな割合で出てくるのです。

いや、「原子番号」って言ってるやん! そこで、こういうスライドを付け加えることにしました。

これでしばらく平和な日々が続いたのですが、今年、思わぬ方面から刺客がやって来ました!

いやいやいや、だから「原子番号」って言うてるやん!! しかも2回も!! その「電気陰性度」はどっから来たん??

なんでこんな誤解が生まれてしまうんでしょうか。一つには、「原子番号」という概念が、化学分野でちょっとなじみが薄い、というところがあるのでしょうね。原子番号は周期律を理解するには重要ですが、それ自体が物質の化学的性質に直接関わるものではありません。もう一つは、「対象をありのままに正確に考える」習慣がまだついていないことでしょう。「なるべく楽に考える」クセがついてしまっているために、「自分に理解できる範囲」に対象を曲げてしまうのだと思います。「原子番号」はわかりにくいけど、「電気陰性度」ならわかりやすいから、そっちで解釈しよう、ということです。論理的にはメチャクチャなんですが、無意識のうちにこういう捻じ曲げをやってしまうのは、実は誰でもあることです(私自身も、専門外の対象だと、捻じ曲げをやってしまっていることにときどき気づきます)。これを克服するには、「知的な基礎体力」を強化することです。身体的な体力が筋トレなどで強化できるのと同じように、知的体力も知的なトレーニングで強化できます。大学での学びはそのための絶好の機会です。

さすがに、「電気陰性度ではなく原子番号である」というスライドを作るのはやめます。そんなことをしていたら、スライドの枚数がどんどん増えてしまうし、そもそも「自分の力で正確に考える」習慣につながりません。「なぜここで原子番号が使われるのか」の説明を加えることで、少しでも正確に考える方向に行ってもらえるように、工夫したいと思います。

「要約する力」としての「言語化力」2025/05/02(金)

「教育痛快バラエティ番組」なるものを主宰しておられる、びーやま氏の記事です。「高学歴・低学歴」という表現がどうも鼻につくのですが(メディアが「ダイヤモンド・オンライン」なのでお察しですが……)、記事内容には共感できるところがあったので、ご紹介します。

びーやま氏は、「高学歴・低学歴」の違いとして、「言語化」のところで差が出る、と感じておられるそうです。以下は、記事中で紹介されている「どうしてその大学を選んだのか」という質問に対する回答の例です。

「将来、弁護士になりたくて法学部一本で考えていたんですが、立地と偏差値的にバランスがいいのが今通っている大学だったので決めました。もう1つ上のレベルの大学にも興味はあって、推薦もあったんですけど、学部が法学部ではなかったので一般受験で今のところにしました」

「うーん。まぁ別に大学とかは興味ないっちゃないんですけど、まわりがみんな大学に行く感じだったのと、親が大学は行けって言うんで来たかもしれないですね。学部はとりあえず推薦があったところでって感じですかね。別にやりたいこともないんで」

だいたい同じ長さの2つの回答なのですが、それぞれに込められている内容の量と質が、全く違います。もちろん、もともと明確な意図を持って大学に進学している人と、そうでもない人の差があるのですが、そこをひとまず措いたとしても、大きな違いがあります。まず、最初の方の回答では「法学部一本で」「立地と偏差値的にバランス」「上のレベルの大学」「(推薦の)学部が法学部ではなかったので一般受験」など、自分の考えを具体的に示す言葉がたくさん使われています。一方、2番目の回答では「興味ないっちゃない」「みんな大学に行く感じ」「来たかもしれない」「とりあえず」「やりたいこともない」など、聞き手にとっては何の情報も持たない、無意味な言葉が文字数の半分近くを占めています。この違いが、びーやま氏のおっしゃる「言語化」能力の差です。

この記事は、びーやま氏に対するインタビューの形式になっていますが、びーやま氏とインタビュアーの間で「言語化」についての認識がかなりずれています。インタビュアーの方は、「積極的な印象」や「文系のほうがスラスラ言葉が出てくる」と話を展開されており、「言語化」=「言葉が多く出てくること」というイメージを持たれているようです。しかし、びーやま氏のポイントは、「言葉が多く出てくる」ことではありません。記事の2ページ目にある通り、「聞きたいことをスッキリとまとめて話してくれる」「言うべきところと、省いてもいいところの取捨選択」が重要です。つまり、ここでいう「言語化」の本質は、「伝えたい内容を、枝葉を省いて、最小限の言葉で正確に表現する」ことなのです。

学歴厨に追い討ちをかけるようで恐縮ですが、「偏差値の高い大学ほど『要約』をさせる」という指摘があります。つまり、難関大学の入試を突破するためには、「枝葉を省いて少ない言葉で表現する」ことが求められているのです。その結果、難関大学には、上に述べた意味での「言語化」能力の高い学生が集まります。このような人は、言葉を使ったコミュニケーションが巧みであることから、卒業後に社会人としても成果を挙げるチャンスが多くなります。私は、このことが「学歴が高い方が社会で有利だ」と言われることの、本当の意味だと思っています。(この他にも、人脈や学歴に伴うイメージなど、別の要因もありますが、「個人の属性としての学歴」の意義はここだと思います。)

ひるがえって、本学の立ち位置について考えます。うちに限らず、私立大学の入試では、記述式の問題を数多く課すことは困難です。理由は簡単で、公平に採点するための人手が圧倒的に足りないためです。ただでさえ、国立大学と比べて学生定員あたりの教員数が少ない上に、滑り止めで受験する人が多いために受験者数の桁が違います。必然的に、合格する人の「要約する力としての言語化力」の平均値は低くならざるを得ません。

そうだとしたら、入学してくれた人、本学を選んでくれた人を、頑張って鍛えるしかありません。私のアプローチでは、まず講義科目で「自分の考え」の言語化を求めていくことから始めます。次に、実験科目で、レポートの添削を通して、「枝葉を省いて正確に書く」トレーニングをします。仕上げは研究室内のレポートと卒業論文です。大学院まで行けば、さらにレベルアップできるでしょう。指導力が問われるところなので、頑張ります。

板タブレットを導入した2025/04/24(木)

だいぶ前に「ディスカッション記録のデジタル化」という記事を書きました。その時に、Surface Pro と Surface Pen を使って、手書き文書を作成していると紹介しました。この手書きシステムはその後もずっと継続して使っています。

最近は、講義中の練習問題の解答も、このシステムで作っています。

手書きにしているのは、「板書の代わり」という意図があります。以前はスライド資料と板書を併用していたのですが、教室によっては板書が使いづらい場合もあるため、最近はスライドに集約して講義を行っています。内容をすべて事前に準備できるので、講義の再現性も高くなります。ただ、PowerPoint + ChemDraw を使って作成したスライドのみでは、どうもメリハリがつかない感じがします。そこで、練習問題の解答部分だけは手書きで出すことにしました。リアルタイムではありませんが、「手で書いた時の雰囲気」が伝わればいいなと思っています。

練習問題の解答スライドは Surface Pro の手書き、その他の資料部分は Mac 上で作成、と使い分けてきたのですが、行ったり来たりするのがだんだん面倒になってきました。Mac 上でなんとか作業フローを完結させたいな、と考えて、いろいろ検討した結果、板タブレットを導入することにしました。One by Wacom のスモールタイプです。

実は液タブ(液晶タブレット)の導入も検討したのですが、画面出力とペン入力の両方を接続しないといけないのが面倒で、「必要なときだけ接続して使う」という使い方は厳しいなと感じました。この点、板タブは楽です。必要な時に取り出して USB ケーブル1本でつなげば、すぐ使えます。

 問題は、操作に慣れが必要なことです。まっすぐ線が引けないとか、震えてしまうとか、なかなか思うように書けません。また、認識範囲が小さいので、すぐに端に到達してしまいます。メディアムサイズにした方がよかったかな?

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