名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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ブログ「天白で有機化学やってます。」 ブログ「天白で有機化学やってます。」
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投稿論文を LaTeX で書き直す2024/11/27(水)

先日公開したプレプリントが、査読付き論文として受理されました。久しぶりの合成系論文です。印刷処理に回ったということで、ゲラ刷を待っていたところ、担当者からこんなクレームが来ました。

... all inline and display equations are provided in picture format. Kindly provide the equations in editable format by using math type editor/O-Math equation editor tool.

「式が図のフォーマットになっとる。数式エディタを使って編集可能な形式にせい」と言ってます。え? Word の数式エディタを使ったはずだけど?……と思ったのですが、改めて見直すと、いくつかある化学平衡の式を ChemDraw で書いていたのを思い出しました。

うわー、これを数式エディタで書き直すのか。それはけっこうダルいな。化学式を Word の数式で書くと、微妙にダサい感じになりがちじゃないですか。下のように、平衡の矢印から平衡定数が妙に離れているとか(行列機能を使って縦に並べているため)、K1の定義式の分数部分の文字が小さいとか、平衡式よりも定義式の方が上にずれているとか。頑張って数式機能を極めればなんとかなるのかもしれないのですが、もともと私は Word が好きじゃないので、「Word のノウハウを極める」という作業に、いまいち熱が入らないのです。

この際、昔ちょっとかじった LaTeX を引っ張り出すか、と腰を上げました。実は、昔から何度も、論文作成環境を LaTeX に移行することを考えたのですが、そのたびに挫折してきたのです。インストールが複雑すぎてメンテナンスしきれないとか、図の eps 縛りが鬱陶しいとか、ソース入力用のアプリがどうも手に馴染まないとか、いろいろ理由があります。でも、最後に手をつけて撤退してから10年ぐらい経っているので、状況が変わっていることを期待しました。

結論から言えば、「これなら使えるんちゃう?」という印象です。TeX Live/Mac のページを見ながら TeX Live 2024 をインストールして、論文を一通り(図・数式・反応式も含めて)LaTeX で書き直すまで、3日ぐらいで終わりました。こんな感じです。

TeX特有のフォントの冷たさは正直好きになれないところですが、機能的には問題なさそうです。Word と比べると、参考文献の管理がやりやすいのは大きなメリットです。また、図は PDF/PNG/JPG でよいようです。(フォントを変えることはもちろん可能です。今回は出版社へのデータ提供が目的なので、なるべく素の設定で組版しています。)

今後の論文を LaTeX で書くかどうかは思案のしどころです。学生に LaTeX を覚えてもらうのは現実的ではありません。うちの学生たちの卒業後の進路を考えると、彼らが LaTeX を使う場面は想像しづらいし、そうだとしたら学生時代に LaTeX を覚えるのは時間の無駄でしかないからです。ただ、今回 Word から LaTeX の書き換えが3日で済んだことを考えると、初期段階の原稿は学生との共同作業で Word で作成し、ある程度形ができてきたら私の手元で LaTeX に移行する、というワークフローはアリかな、と思います。(心配するほど論文書くんか?というツッコミが来るかも)

後日談:LaTeX バージョンを編集部に送ったのですが、入れ違いにゲラ刷がやってきて、それは最初の Word バージョンで作成されたものでした。なんじゃい、LaTeX バージョン要らんかったんかいな! 3日分の時間返してよ! ……まあ、論文を LaTeX で書きなおす体験ができたので、無駄だったわけでもないんですがね。

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