名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
トップ 教育 研究 プロフィール アクセス リンク キャラクター ブログ
トップ  >  ブログ  >  大事なのは「読む力」

 

ブログ「天白で有機化学やってます。」 ブログ「天白で有機化学やってます。」
< 有機化学1の成績 | ブログトップ | 就活解禁 >

大事なのは「読む力」2018/02/15(木)

大事なのは「読む」力だ!~4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く」(Yahoo! ニュース個人、江川紹子さん)。新井先生って、AI に東大を受験させるプロジェクトをやっていた人ですね。この「4万人の読解力テスト」の結果は、あちこちで取り上げられていたから、ご存知の方も多いでしょう。

以下の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。
「Alexandraの愛称は( )である。」

(1) Alex (2) Alexander (3) 男性 (4) 女性

もちろん正解は (1) です。このブログを読んでいる人で、正解できない人はたぶんいないと思います。でも、高校生でこれに正解できない人が 35% もいる。母数が 432 名と少ないとはいえ、これは教育を業とする人には衝撃的な結果だと思います。この文を正確に読めない人に、何をどうやって教えればいいのか?

本当は、こういう読解力の訓練は、中学・高校の国語の時間でやっていただきたいところです。新井先生の提案は、国語の授業をもっと系統的にやる必要がある、ということ。

『やっていれば、そのうち分かるようになるよ』というフワッとしたやり方ではなく、システマティックに国語を教えます。『気持ちを推し量る』国語の授業の半分を、ちゃんと意味が読めるための体系的な指導に移していく必要があると思います。

実は、現在の中学・高校の国語の授業では、文学的・情緒的な内容だけでなく、論説文が相当の重みで取り上げられています。ただ、それを教える国語の先生方が、「文章を論理的に読み解く」よりは「全体の文意を直感的につかみとる」ことを得意とされている、という事情はあるでしょう。システマティックに国語を教えるためには、一文を細かいパーツに分けて、論理的なつながりをちまちまと分析していく作業が必要です。そういうノウハウは、まだ一部の先生方の間でしか共有されていないのかも知れません。

いや、理系の大学教員である私が、中・高の国語教育に物申しても、的外れな指摘にしかならないでしょう。むしろ私がやるべきことは、現実に読解力不足を抱えているうちの学生たちに対して、何ができるかを考えることです。これは非常に悩ましい。さすがに上の Alex の例文が理解できない人はいないと思いますが、もう少し込み入った文章になると、正しく読み取れない人が急増します。講義で話した内容が通じていない、講義資料の内容を読み取ってもらえない、課題や試験で出した問題文が読み取ってもらえない、という経験はしばしばあります。

以前紹介した出口汪さんの「論理エンジン」などを参考にして、何か仕掛けられないかな、とも考えています。出口さんは最近、社会人向けの教材なども開発されているようです。ただ、かなりコストがかかりそうなので、研究室単位で導入するのはちょっと厳しい。もう少し簡素な教材で、欲を言えば理工系の学生の関心を引きやすいような内容であれば、ありがたいんですけどね。

< 有機化学1の成績 | ブログトップ | 就活解禁 >