グローブボックス中の有機溶媒2017/02/09(木)
最近、研究室でグローブボックスの使用頻度が増えてきました。うちのグローブボックスは、美和製作所の MDB-1 型です。私が初めてグローブボックスを使ったのはアメリカに滞在していた時で、その研究室では Vacuum Atmosphere 社の製品を使っていました。当時は日本でも Vacuum Atmosphere 社か、MBraun 社のグローブボックスを使っている研究室が多かったように思います。しかし、海外メーカーのグローブボックスは、体格の大きな欧米人に合わせて作られていますから、箱が大きくて作業しにくいのですね。美和製作所のグローブボックスはやや小振りで、日本人の体格に合っています。しかもサイドボックスが大きめなので、使い勝手は良好です。
うちの最近の実験では、グローブボックス内で有機溶媒を頻繁に扱っています。単にものを溶かすだけでなく、反応溶液のろ過を行ったりもするので、溶媒の露出が多くなります。そうすると、グローブボックス内に有機溶媒の蒸気が溜まってきます。これは、いろいろな意味でよろしくない使い方です。最近は、グローブボックス内で調製した NMR サンプルに、使ってもいないジクロロメタンや THF のシグナルが出るようになってしまいました。学生いわく、「グローブボックス内の蒸気を吸ってると思います」と。えー、そんなにひどいのか??
そこで、対策を講じてみました。まず、小型のダイヤフラム真空ポンプを用意します。今回はアルバック機工の DAP-15 を使います。以前に書いた DA-15D でもよかったのですが、気体を吸ってくれればいいので、なるべく安価に済ませます。
次に、内径 41 mm の透明塩ビ管を適当な長さに切って、中に活性炭を詰めます。活性炭は、目の粗いものを使います。今回はナカライテスクの 07931-55 (ヤシガラ製未洗浄、8-32 mesh)を使いました。もう1つ粒が大きい 07932-45 (4-10 mesh) でもよかったかも。
両端は綿で止めて、シリコンゴム栓に穴を開けて、チューブコネクタ を通しておきます。昔はこういう目的のために短く切ったガラス管を溜め込んでいたものでしたが、もう最近は PP のチューブコネクタばかり使ってますね。壊れないし。
ポンプと活性炭トラップをゴムホースでつないで、ポンプを動かします。活性炭トラップを通して外気を吸い込む格好ですが、抵抗がかなり大きくて、少しずつしか吸ってくれません。うーん効果あるんか?
一抹の不安を抱きつつも、実際にこの一式をグローブボックスの中に置いて、数日間ポンプを動かしてみました。サイドボックスを開けてみると、今まで鼻についていた有機溶媒臭がきれいに消えていました。活性炭あっぱれ!
とても低コストでグローブボックス内の有機溶媒蒸気の対策ができるので、おすすめです。ただし、非常に厳密な脱水・脱酸素環境が必要な場合は、活性炭の前処理を注意深く行う必要があるでしょうから、ご留意ください。