小論文コンクール2013/10/18(金)
先日紹介した「論文の教室」は、長い論文を書くための講座でしたが、実用的にはもっと短い文を書く機会が多いと思います。社会人ならちょっとした業務報告書とか始末書(あまり書きたくないけど)とか、学生なら「…を説明しなさい」というレポート課題などです。入試で小論文が課されるところも多くあります。
世の中で小論文と言えばどんなものなんだろう、と思って、「小論文コンクール」なるものをちょっと覗いてみました。すると、全く違う2つの種類の小論文があることに気がつきました。もう少し正確には、「評価されるポイントが全く違う2種類のコンクールがある」という意味です。一つは、与えられたテーマに対して自分の個人的な体験を元にして主張を語ることを良しとするもので、新聞社主催のコンクールではこういう文が求められることが多いようです。もう一つは、ベネッセが主催している「高校生環境小論文コンクール」のように、客観的な事実を裏付けにして主張を語ることを良しとするものです。実は、後者のタイプのコンクールはベネッセのこれしか見つけられませんでしたので、「2種類のコンクールがある」というよりは、「ベネッセの環境小論文コンクールが特異である」と言うべきかも知れません。
一方、実社会で求められる文章作成技術はどういうものか、と言いますと、これはもう圧倒的に「客観的な事実を裏付けにして主張を語る」タイプの文章なのです。世に存在する「個人的な体験を元にする文」と言えば、文芸誌の小説・エッセイ類と、あとは新聞のコラム(「天声人語」とか)ぐらいのもので、大多数の人にとって書く機会はほぼ皆無です。国語教育に関わっておられる先生方は文学部のご出身の方が多いと思われますので、文芸的な香りのする文章に惹かれる気持ちはよくわかるのですが、激しい競争にさらされるビジネスシーンで生き延びる術を若者に身につけてもらうためには、実用文のトレーニングがもっと必要ではないかなと強く感じます。
そういうわけで、ベネッセの「環境小論文コンクール」には孤塁を守って頑張っていただきたいところです。環境省が後援していますが、文部科学省の後援もぜひとりつけてください。そして、こういう実用的な文章の優劣を競う場が、教育界にもっと広がって欲しいと願っています。
なお、ここで書いているのは私の個人的な意見であって、所属学科・学部・大学の意見を代表するものではありません。特に、名城大学推薦入試の小論文対策をほのめかすものでは全くありませんので、悪しからずご了承ください。