日本化学会第105春季年会2025/03/29(土)
日本化学会の第105春季年会に行ってきました。今年は関西大学です。関西大学に来るのは初めてだと思います。
今回も、「イノベーション共創プログラム」を中心に回りました。自分は社会実装からは遠いところにいるのですが、社会実装の中心にいらっしゃる企業の方のお話は本当に勉強になります。大学から送り出した卒業生も企業での社会貢献に尽力してくれているわけですから、そこからの距離感はきちんと持っておかないといけない。まあ、ある意味自分の無力さを痛感して帰ってくる、というのが毎年のお約束ではあるのですが。
今年は初めて、創薬系のシンポジウムを覗いてみました。抗体薬物複合体 (ADC) や、ゲノム編集技術を使った医薬品開発など。自分のイメージとして、有機化学が創薬に貢献できることって何があるのかな?と疑問に感じていたのですが、今回のシンポジウムのテーマが「バイオ医薬品」だったこともあり、現代の創薬ニーズにスピーディーに応えていくためにはバイオ系重視のアプローチが必須なのかな、というのが漠然とした印象です。その中で、京大の浜地格先生の講演は、タンパク質をターゲットにしつつも有機化学真正面のお話でした。SN2という言葉を学会講演で聞いたのは久しぶりな気がします。
他には、いつものようにカーボンニュートラル関連のシンポジウムです。「炭素を使う、回していく」という考え方を、化学専門でない人にも広めていくのは、重要な視点かなと思いました。一つ印象的だったのが、産総研の佐山和弘先生のお話です。前半は人工光合成、後半は「ネガティブエミッション」というお話で、特に「大気中からのCO2の除去に真剣に取り組まないといけない」と強く語られていました。自分自身、どうしても「二酸化炭素除去」(CDR = carbon dioxide removal)という考え方は、「見えなくして誤魔化してるだけじゃん」という否定的な印象がぬぐえないでいるのですが、それに対する先生の答えは「2050年ゼロエミッションを達成しようと思うなら、そこを避けて通るわけにはいかないよ」ということでした。確かに、それだけ尻に火がついた状況ではあります。何人かの演者の方が、日本は資源のない国だから、技術を磨いて勝負するしかない、と強調されていて、それは全くその通りだと思います。みんなで一生懸命スキルを磨きましょう。