名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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共通テスト「国語」第3問2025/01/29(水)

今年の共通テスト「国語」の第3問、「実用的文章」の分野で、「与えられた課題に対する『文章』を、資料を参照しながら添削する」という内容が出題されて、話題になっています。

私も翌日の新聞でこの問題を知り、たいへん興味深く読みました。与えられた課題に適切に対応すること、資料を正しく読み取ること、言いたいことを正しく文章で表現することが、マークシート型の設問で問われています。よく工夫された問題だと思います。難易度が高いとはあまり思いませんでしたが、一方で「論理的に文章を組み立てる力が弱い」生徒さんには、なかなかハードルの高い設問かもしれないな、とも感じました。今回の問題は、やや「間違い探し」的な要素が強いと感じましたが、このような設問が定着していくと、それなりに意味のある成果が出てくるんじゃないでしょうか。

現行の学習指導要領が始まった時、「論理国語」科目で「実用的文章」に重点が置かれると聞いて、なんじゃそれ、と思っていました。「実用的文章」の例として「契約書」とか「取扱説明書」が想定されている、とも聞きました。それって高校の「国語」の時間にやることなんか?と疑問に思いました。ただ一方で、「論理的に言葉を扱う」ことはとても重要なので、系統立った指導が行われて欲しいな、という思いもありました。共通テストの出題というのは、学習指導の「到達目標」の一定の目安になります。今年の第3問が「論理国語」の到達目標を示しているのであれば、その方針は歓迎したいと思います。

面白いなと思ったのは、「『共通テスト国語』東大生から"疑問噴出"の中身」という西岡壱誠さんの記事です(東洋経済オンライン 2025/1/20)。東大生の方々曰く:

「文章中に散らばった情報を集めて、情報同士を繋ぎ合わせて整理していくような問題とは大きく異なり、ただただ解きにくいだけの問題(3年生 理系)」

「今までの国語の問題をレゴだとすると、今回の問題は間違い探し。自分で考える能力を求めているのではなく、ただただ、間違いを探させるだけだ(4年生 文系)」

私はこの東大生たちの声を読んで、「それはあなた方が『今までの国語の入試問題』に過剰適応していただけなのでは?」という感想を持ちました。「文章中に散らばった情報を集めて繋ぎ合わせて整理する」力は、もちろん情報処理能力として一定の価値がありますが、それは「論理的に思考する」こととは質が違うと思うのです。この問題を「自分で考える能力を求めているのではない」と評価されるのだとしたら、その人にとって「考える」ということの意味が私とは違うんだろうな、と思います。「散らばった情報を集めて整理する」能力は、パズルを解く能力に近く、「筋道を立てて考える」能力とは方向が違います。高校生には、パズルを解く能力よりも、筋道を立てて考える能力を重視してほしい、と私は考えます。

共通テストの話に戻ると、今回の問題は、まだ手探り状態でありながらも、「論理的に考える力」を共通テストの枠組みの中で何とか測ろうとする、大胆な試みなのではないかな、と私は感じます。共通一次〜センター試験〜共通テストと変遷してきたこのテスト、なんだかんだと常に批判にさらされていて、出題に関わっている先生方のご苦労は計り知れないものがあります。その中でも、何とか日本の高校生・大学生の知的水準を高めることに貢献したい、という意図が、出題のあちこちからにじみ出ているのです。今年は新課程の1回目でしたが、関係者のご尽力に思いを馳せつつ、今後の展開を見守りたいと思っています。

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