名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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日本化学会第104春季年会2024/03/25(月)

日本化学会第104春季年会に参加してきました。会場は日本大学船橋キャンパス。春季年会の開催地としては馴染みが深いキャンパスですが、宿をとるのに毎回けっこう苦心しています。今回は船橋駅の近くに宿をとりました。宿泊カードを書いた時に、ご主人に「大学の方がさっきも来られたんですが、学会か何かですか?」と聞かれたので、はい日本大学で学会です、と答えたら、少し怪訝そうな顔をされました。日大船橋キャンパスの存在があまり知られてないのかな? んなことないですよね??

最近は、学会にいくと、普段あまり聞く機会のない会場を回って勉強することにしています。今回は、熱工学と高分子科学のセッションを回りました。

熱の話はいろいろ面白く、「熱力学をだますことを考えよう」(リチウムイオン電池の吉野先生の言葉だそうです)というスローガンが印象に残りました。昨年に続いて、カーボンニュートラル絡みのセッションだったので、二酸化炭素を濃縮・回収するときの熱収支の話など、自分の研究にも関わってきそうな内容がありました。あまり強い回収剤を使って濃縮すると、放出する時にエネルギーが必要になってしまいます。ある特定の過程にだけ注目するのではなくて、サイクル全体でのエネルギー収支をちゃんと考えないといけない、ということです。化学工学系の人はトータルコストを常に意識していますから、これは当たり前なんでしょうけど、私のように個別の反応への興味から化学に入ってきている人(そういう人が化学分野には多いと思う)は、つい全体のエネルギー収支のことを忘れがちなんですね。

高分子科学の方では、カネカの佐藤俊輔氏の講演がたいへん面白かったです。生分解性バイオポリマーであるポリ-3-ヒドロキシブチレート/ヘキサノエートの話だったのですが、最初に物質特許を取ったのが30年前とのこと。よく30年間も研究開発を続けたものだ、と思います。世界中の微生物をスクリーニングして、結局自社工場の敷地内から見つかった微生物が一番よかったとか、NHKの「新プロジェクトX」で紹介してほしいぐらいの話です。

あと、「化学教育フォーラム・化学用語検討小委員会の取組と学習指導要領」は、登録はしましたが時間が合わず、聴講はしませんでした。登録したので予稿集だけダウンロードしました。予稿集がかなり詳細に書かれていたので、内容はだいたい把握できました。用語の中で「気体から固体に直接状態変化すること」を「凝華」と呼ぶのが好ましい(昔は「昇華」と呼んでいた)、という話は聞いたことがありましたが、現行の高校化学基礎の教科書はすべてこの用語を採用している、とあって驚きました。確かに、手持ちの教科書を確認すると、欄外ではありますが、「気体から固体に直接変化することを凝華と呼ぶことがある」という記述が見つかります。今の教員世代はだいたい「昇華」と呼んでいると思うので、今後要注意ですね。

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