名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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日本化学会第103春季年会2023/03/28(火)

日本化学会第103春季年会に参加してきました。3年前は中止、一昨年と昨年はオンライン開催だったので、4年ぶりの対面開催です! 会場は東京理科大学野田キャンパス。利根運河のほとりにあります。初日はこんな感じでしたが、帰るころには桜が思い切り咲いていました。

学生のポスター会場を見に行ったりしながら、主に産業関連のシンポジウムを聴講しています。アカデミックな話は論文を読めばだいたいわかるのですが、産業界の動きは話を聞かないとなかなかわかりません。日本化学会の年会は、アカデミア中心に運営されていますが、産業界からもたくさんの参加があって、私たち大学関係者にはお話をうかがう貴重な機会になっています。

今回は、人工光合成関連ではあまり目立った企画はなく、電池関連や脱炭素関連の企画に参加しました。特に、「カーボンネガティブの実現に向けた革新的触媒技術」は CO2 還元の話とも関連するので聴講したかったのですが、午前中は化学教育のセッションとぶつかり、午後はリモートで本学の入試関連業務をやっていたので、聴けたのは千代田化工建設株式会社の岡田佳巳氏の基調講演だけでした。

この講演では、同社が推進されている MCH(メチルシクロヘキサン)を使った水素貯蔵・運搬について紹介がありました。トルエンの水素化による MCH の生成を水素貯蔵に使う話は知っていたのですが、商業ベースに近いところまで進んでいるとは知りませんでした。MCH の貯蔵や運搬は、従来の液体炭化水素のインフラがそのまま流用できるので、大きな優位性があります。ただ、生成したトルエンを別のタンクに貯めておいて回収しないといけないので、小さな事業所で使うのはなかなか大変そうです。講演の中で「離島に運んで使う」という話題もありましたが、カーボンニュートラルな合成燃料を使うのとどちらが現実的なんだろう?と疑問を持ちました(質問すればよかったな)。

一方、別の会場の講演では「空気中の二酸化炭素を濃縮するのに必要なエネルギー」についての議論があり、これが半端なく大きい、という話もありました(東工大の村上陽一先生)。そのあたりと組み合わせると、何が最適解なのかが見えてくるのかもしれません。

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