名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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「いま大学で勉強するということ」(佐藤優・松岡敬著、岩波書店)2018/12/27(木)

同志社大学学長の松岡氏と、同志社大卒で多方面で活躍される作家の佐藤氏の対談。2020年の大学入試改革を控えて、大学教育はどうあるべきか、と熱く意見を交わしておられます。

大学一般論、というよりは、「同志社大学論」です。松岡氏は同志社大工学部機械工学科、佐藤氏は神学部卒業ということで、理系・文系の違いはありますが、「同志社スゴイ」が基本路線です。決して皮肉を言っているわけではなくて、同志社大学は確かにそれだけのものを積み上げて来たのだと思います。受験産業の枠組みでは「関関同立」でひとくくりにされていますが、関西出身者の肌感覚として、やはり同志社は一つ抜けている印象です。

いろいろ興味深い話がありますが、とりわけ目についたのは、松岡氏が同志社大学の「ビジョン2025」について語られるくだりで登場する、「リーダー養成プログラム」という施策です。このプログラムは、学生が「自分の専攻とは違う学問」を副専攻として学ぶものです。そこには学部の壁がなくて、同じコースに理工学部・経済学部・文学部から学生が来ている、というようなイメージです。

松岡氏の熱い語りを見て、少々複雑な思いを抱きました。学長レベルの人は、こういう施策の必要性がよくわかっている。既存の学問分野の「枠」を打ち破るような動きを打ち出していかないと、これからの大学は生き残っていけない。でも、実情としては、現場がなかなか動かない、というのが実際のところじゃないでしょうか。こういう企画は、教員にものすごい力量が要るし、負担も大きいと思います。

松岡氏は、「学生の成長のためなら一緒に頑張りましょうと。そのような熱意溢れた教員たちがこのような教育改革に挑んでくれたらいいですね」とおっしゃってます。でも、いくら熱意があっても、人間に与えられた時間は有限ですからね。「熱意」だけでカバーするんだったら、ブラック企業の「やりがい搾取」や、今話題の中学・高校教員の超過勤務と同じ構造になってしまいます。

このようなプログラムを本当の意味で成功させるには、特別な制度設計が必要だろうと感じます。たとえば、通常の学部教育を一部免除して、こちらの教育プログラムにある程度専念してもらう、とか。その場合は、通常の学部教育のために、余分の人手を割り当てる必要があります。逆に、このプログラムのために特別に人を割り当てる考え方もありますが、そうすると、たぶん既存の専任教員とは「全く関係ない」ところでこのプログラムが動いていく形になってしまうでしょう。それでは、単にアドバルンを打ち上げているだけで、本当に大学を動かそうとしているとは言えなくなってしまう。

同志社大学はどんな風に進めていかれるんでしょうか。同志社で教員をやってる知り合いがいるので、今度会ったら聞いてみよう。

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