学力以外の能力を測る?2018/04/27(金)
2020年の大学入試改革に向けて、いろいろな動きがあります。「JAPAN e-Portfolio」はその一つです。これは、文部科学省の委託事業として試験運用されているもので、高校生がいわゆる「学校の勉強」以外の活動について記録するものです。大学入試では「調査書」にあたるものとして利用することも検討されています。この事業についての紹介記事が出ていました(もう2週間も前ですが…)。
【全国の高校で導入中、活動記録サイトの正体】 学校行事など「学力以外」が受験の判断材料に : https://t.co/y8FuV0zouA #東洋経済オンライン
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) 2018年4月15日
大学入試改革の一環として、「従来型の学力」偏重の入試制度を改める方向が打ち出されています。2014年の「高大接続改革答申」で、高校教育の目標として「基礎的な知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」を(高校教育における)「学力の三要素」と定め、大学入試でもこれらの要素に基づいて入学者を選別するように求められています。この中で、「基礎的な知識・技能」「思考力・判断力・表現力」については筆記試験で判断することが一応できますが、「主体性・多様性・協働性」については筆記試験では判断できません。ではどうするのか、という問題が発生します。
「JAPAN e-Portfolio」は、生徒が自分の活動を電子データとして記録し、自分の成果や学びについて(高校の先生も協力して)振り返るのに活用するとともに、大学の入学者選抜に利用するというものです。繰り返しますが、期間限定の試験運用制度なので、今後こういう形での制度が定着するかどうかはわかりません。試験運用を通して、良い点・悪い点を明らかにして、今後の制度設計につなげていこうという趣旨なのでしょう。
上記の記事で著者の福島氏が指摘しておられる「ポートフォリオ重視がはらむ危険性」は、認識しておく必要があります。一つは、ポートフォリオが高校生の活動を制約する「権力装置」として働くことの危険性です。もう一つは、評価の「傾向」が察知されることによって、「良い評価を得る」ための活動へ生徒が誘導されてしまう場合、それは「主体性」と言えるのかどうか、という問題点です。
これは本当に難しい問題です。一つのキーワードは「多様性」かな、と思います。「生徒会役員をやって体育祭の実行委員長をやって部活の副部長をやって…」みたいな人ばっかり何十人も集まったら、めちゃくちゃ鬱陶しいじゃないですか。高校は帰宅部だったけど書道教室にずっと通っていて段位を持ってるとか、地域のサークルでおばあちゃんたちと一緒にオカリナ吹いてたとか、いろんな人がいた方が世の中は面白い(個人の感想ですので念のため)。
「評価」する側にも覚悟が求められるな、と思います。従来型の調査書を使うにしても、e-Portfolio みたいな制度を使うにしても、なるべく多様な価値観の元に学生の可能性を測るものでないといけない。簡単な解はありませんが、高校生が積極的にいろいろチャレンジした上で大学を目指してくれる、そんな世界を作っていければと思います。