有機化学2の試験:レジュメから見た傾向2016/08/24(水)
以前に予告した通り、有機化学2の試験で回収したレジュメを分析してみたいと思います。どうしてレジュメを回収するのか、と不思議に思った人もいるかも知れませんが、このレジュメは、「有機化学2全般についての A4 20ページのレポート」でもあるわけです。こんな分量のレポートを提出してもらう機会はなかなかありません。しかも、単位を取りたい一心でみなさん書いてますから、普段のレポートよりよっぽど真剣なわけです。誰がどのようにこの科目に取り組んでいるか、これほど明快に示してくれる資料はありません。
単位が取れなかった人のレジュメを見てみます。よく見られるのは、次のようなものです。
・どこに何が書いてあるのかわからない。いくら緻密に書き込んであっても、必要な情報をすぐに取り出せないのでは意味がありません。「16回 非局在化電子を持つ分子」「17回 芳香族性」というように、各回のタイトルを明記して、その下にさらに「ベンゼンの分子軌道」「シクロオクタテトラエンの分子軌道」というように「小見出し」をつけて分類します。情報整理の基本ですね。
・図とキーワードしか書いてない。ピロールの分子軌道の図と、その横に「sp2混成」と一言。いや、これだけじゃわからんでしょ、sp2 混成だから何なの? 講義で、「なぜピロールは芳香族性を持つと言えるのか」という説明をしているわけですから、その説明を自分なりに解釈して書き込んでおかないといけません。もちろん、レジュメは自分用のメモですから、十分にわかっていた上で覚え書きとして「sp2 混成」と書いているのなら、それでいいんですよ。実際、その程度のレジュメで 90 点をとっている人もいます。でも、理解が十分でないことを自覚しているのなら、ちゃんと書き込まないとね。(その前に、「自分の理解が十分でない」ことを自覚することが先決ですが。)
・演習問題の解答だけを書き写している。同じような問題が出れば乗り切れる、と思っているのかな。よくある問題のパターンは確かにありますから、30点ぐらいはとれるでしょうけど、合格点は無理ですよ。
・ヤマを張っている。たとえば、非局在化と芳香族性の章は捨てて、他の章に集中する、というやり方です。配点から言えば、他で点数を稼げば合格点は取れるはずですが、実際には取れていないわけです。この場合、非局在化を捨てた、ということは、芳香族求電子置換の配向性やエノラートの反応も捨てた、ということになります。ペリ環状反応も怪しいでしょう。芳香族性を捨てると、やはり求電子置換を捨てることになります。要するに、ヤマを張ってどこかを捨てると、他のところでもぼろぼろ点を落とすことになるわけです。有機化学は全部つながってますから、真面目に全部勉強してください、ということです。
あと、ちょっと気の毒だな、と思ったのは、
・非の打ち所のないレジュメを作ったのに、50 点台しかとれなかった。4人ぐらい該当者がいました。こんなに勉強しているのに、点が伸びなかったのはどうしてだろう、と調べてみると、これらの人に共通していたのは「毎回の復習問題の正答率が低い」ことでした。普段の復習から、自分の理解が進んでいないことがわかっているはずなのに、それを放置しているわけです。これでは、なかなか進歩はしませんね。
毎回講義の最初に復習問題の解説をしているわけですが、それでも理解できない場合は、わかっていそうな人に「この問題がどうしてこの答えになるのかわからない」という疑問をぶつけてみることが必要です。私に聞くのが一番確実ですが、とりあえずは手近な友人をつかまえて聞いてみるのもいいでしょう。授業はどんどん進んで行きますから、なるべく1回ごとに疑問点を解消して行くことが大切です。これは、他の科目についても言えることです。