COP21 パリ協定2015/12/21(月)
先日フランスで開催された COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、難航した交渉の末に、「パリ協定」を全会一致で採択して閉幕しました。パリ協定の掲げる目標は非常に野心的で、2100 年には人為的な温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにすることが謳われています。「実質的にゼロにする」とは、人為的な温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出量を、植林等による人為的な吸収量増加量とバランスさせる、という意味です(国立環境研・江守正多氏の解説記事参照)。
これは目まいのするような大きな目標です。この目標を本気で達成しようと思えば、世界のエネルギー消費体制を根本的に変えて行く必要があります。少なくとも、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を、「燃やしてエネルギーを得る」という目的で消費することは、終わりにしなくてはならないでしょう。発生する二酸化炭素を回収するコストに見合わないからです。どうしても二酸化炭素を大量に発生させることが必要な事業(鉄の精錬など)は、できるだけ一箇所に集約して、発生した二酸化炭素を「大気中に放出されない」形で固定化する必要があります。
私は化学の研究者として、二酸化炭素の固定に取り組んでいこうと思っていますが、「二酸化炭素から燃料を作る」という考え方では不十分なのかな、と考え始めています。社会が「化石燃料はエネルギー源としては利用しない」という方向に向かうのであれば、燃料を作っても意味がないからです。そうではなくて、「炭素資源の再生・再利用」という考え方をこれから明確にしていかないといけない。研究の方向性も少し練り直していく必要があるように思います。
なお、今回の「協定」では、各国の温室効果ガスの排出量削減目標には法的拘束力はありませんので、どの程度の実効性があるのか疑問を感じる向きもあると思います。それでも、多くの国が参加して、全会一致で「方向性」を決めた、という意味では、パリ協定には大きな重みがあると言えます。高く掲げた理想を冷笑に付すことなく、近づく努力を続けていきたいと思っています。