ビスマス2014/04/15(火)
「化学と工業」(日本化学会の会員誌です)の4月号をぱらぱらめくっていて、ある一節に目が止まりました。「原子量表 (2014)」の脚注です。
*: 安定同位体のない元素。これらの元素については原子量が示されていないが、ビスマス、トリウム、プロトアクチニウム、ウランは例外で、…
えっ! ビスマスって安定元素の中で一番重い、というのが常識だと思っていたのに。慌てて調べてみたら、2003年にこんな報告がありました。10年以上も前だったんか…
"Experimental detection of α-particles from the radioactive decay of natural bismuth," P. Marcillac et al, Nature 422, 876-878 (2003). doi:10.1038/nature01541
これによると、天然に存在する唯一のビスマス同位体である 209Bi は、半減期 (1.9±0.2)×1019 年でα崩壊するとのことです。とてつもなく長い半減期なので、実質的には安定といってもいいところですが、厳密に言うと「安定元素で一番重いのは鉛」ということになりますね。ビスマスというのは生体への害が少なく、医薬品の原料になったり超伝導体の構成要素になるなど、なかなか面白みのある元素なのですが、「安定元素の中で一番重い」という肩書きがなくなってしまったのは何となく残念な気がします。