日本化学会年会2014/03/29(土)
ただいま日本化学会春季年会の真っ最中です。例年関東と関西で持ち回りだったのですが、今年は名古屋大学です。例によって光合成関連のセッションにも顔を出したりしていたのですが、今回は化学教育セッションの話。今日の午前にポスター会場で「化学教育・化学史」の発表があったので、見に行ってきました。みなさんいろいろ工夫していて、刺激を受けます。
北里大の大極先生:「大学初年次用化学教材の開発:量子化学計算に基づいたイラスト・アニメーションの教材の素材集」。分子軌道や反応経路などのものすごくきれいなアニメーション gif をたくさん作っておられました。化学反応については、単に黒板に化学式で書いて見せるだけのと比べて、学生の理解度が格段に上がるそうです。きれいな絵を見せると「ああ、きれいだね、それでこれ何だっけ?」で終わってしまう恐れもありますので、講義する方の工夫が要りそうです。
(3/31追記:大極先生のウェブサイトを教えていただきました: Clip Art of Quantum Chemistry)
学芸大の生尾先生:「反応機構のイメージ獲得のための量子化学計算によるCG可視化、電子実験書の開発に向けて」。こちらもCGを使った化学反応の可視化です。ポテンシャルエネルギー曲面と分子構造の変化を同時にアニメーションで見せる工夫をされていました。また、タブレット端末上の電子ブックを使って、実験実習に取り入れようとされているそうです。
津山高専の廣木先生:「卓上NMR装置『picoSpin』を使った化学教育」。最近出てきた、永久磁石を使った卓上型NMR装置を学生実験に活用する実例の紹介。学生実験レベルだったら 40 MHz でも十分みたいです。私たちが学生の頃は、60 MHz ぐらいの永久磁石の NMR があって、これがまた気難しくてうまくとれないことの方が多い、という代物だったのですが、そのへんは大丈夫そうです。ただ、濃度が必要なので、液体はニート(無溶媒。無職じゃないよ)でとればいいのですが、固体は濃厚溶液にしないといけないためちょっと難しいかも。
愛媛大の和田さん、大橋先生:「スーパーボール型結晶格子モデルの開発と実践」。直径 38 mm のスーパーボールを使って結晶格子の模型を作ったり、結晶単位格子を切り出したり、切り出した結晶に水を満たしてすきまの体積を測って充填率を実測したり、といろいろあります。とにかく、鮮やかな色のでっかいスーパーボールがごろごろ並んでいるさまが印象的でした。発泡スチロールの球を使うより手間がかからずコストも案外安いそうです。