名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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就職に学業成績が影響する2013/12/18(水)

平成27年度新卒採用が始まりました。今朝のNHKニュースで取り上げられていましたが、一部の企業で大学での学業成績を採用に反映させる動きがあるようです。大学教員として、この動きは大いに歓迎したいと思います。

これまで、企業の採用活動においては、学生の「人間性」が焦点になっていました。人間性が重要であることは論をまちませんが、大学での本業である学業については一切問わず、課外活動で何を体験したかばかりが採用活動で話題になるようでは、いったい何のために大卒を採用しているのか、ということになります。これに対して、ある人(企業の人事担当者を自称)が「その大学の入学試験に通ったという事実だけが重要なのであって、そこから先のことは誰も気にしていない」と豪語しているのを見たことがありますが、そんな人事をしていてまともな人材が採用できるのでしょうか。大学4年間遊び暮らしていた人を4年前の実績と面接時の口車だけで採用すれば、入社後は当然のように「もう採用試験通ったんだからオレ勝ち組だし、あとは仕事は極力手を抜いて査定に響かんようにテキトーにごまかせば万事オッケー」となることでしょう。そんな人ばかりの会社じゃ将来は危ういですよね。

学業成績を採用に反映させる企業の方のインタビューを拝見していると、実際には成績自体を見るわけではなく、「『やりたいこと』ではないが『やらなければならないこと』に直面した時にどのような行動をとるか」を学業成績から読み取ろうとしているとのことです。従来のエントリーシートや面接では、学生のそういう面はなかなか見えてきません。人間関係でも企業活動でも、人物の真価が発揮されるのは「苦しいとき、思うようにいかないとき」なのですが、そういう面を自己申告で見ようとしてもなかなかうまくいかないのですね。ありもしない苦労話を盛る奴もいっぱいいますし。

大学側から見ると、企業の採用活動で学業成績が反映されることで、学業に対する学生の考え方が変わってくることを期待します。学業は今でも学生の「本業」(であるはず)なわけですが、就職活動に効いてくるとなると、今以上に真剣に取り組まざるを得なくなるでしょう。限られた自分の時間の中で、どのように学業に取り組むかも考えるようになるでしょう。「学生はちゃんと勉強しとけ」というメッセージが企業から送られることは、非常に大事なことだと思います。

もちろん、大学教員としてはとても大きなプレッシャーを感じます。学生が真剣に取り組んでいるのにずぼらな講義をしていたら、そのうち「あの先生の授業はぜんぜんダメだ」という不満が企業にまで伝わることになります。卒業生の就職状況にも大学の志願状況にも影響するでしょう。これは大学としては致命的です(私立大学では特に)。さらに、大学教育の本質的な役割として、「勉学に対する取り組み方」という点で高校までとは明確に違うレベルに学生を引き上げないといけません。大学で学んだ内容自体は社会に出たらあまり役に立たないかも知れませんが、「取り組み」のレベルが高いことは自分を助けてくれるはずです。この点を意識しながら、いろいろ工夫して実践して行きたいと思っています。

最後に、この一連の動きの仕掛人の一人と思われる辻太一朗氏の「なぜ日本の大学生は、世界でいちばん勉強しないのか?」(東洋経済オンライン)というコラムをご紹介したいと思います。このコラムに書かれていることは、耳の痛いことも含めていちいちごもっともです。この記事に限らず、東洋経済オンラインは面白いですよ。大学生のみなさんにもおすすめしたいビジネスサイトです。

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