英語の勉強法2013/10/04(金)
化学のような技術系分野を職業にしていますと、英語の文献を読む機会が非常に多くなります。研究に参考にする情報は必ず「一次情報」(ある研究を最初に行った人が自分で発表した生の情報)までさかのぼらないといけないわけですが、今はほとんどの研究者が一次情報を英語で発表しています。当然、仕事で結果を出すためには、大量の英語文献を短時間に読む力をつけておかないといけません。一報の論文を読むのに一週間以上かかっているようでは話にならない。
そのためにはどのような勉強をすればよいのか。私はまだ答えを探している途中です。世の中には「英語勉強法」と称するものは山のようにあるのですが、どれを選べばよいのかは正直まだよくわかりません。個人的な体験はもちろんあるのですが、一般化できるようなものでもありません。一応書いておくと、中学の時にはNHKラジオの英語講座を毎日聴いていました。高校では学校の英語の宿題が半端じゃない量だったので、それをこなすので精一杯でした。夏休みの宿題で長文読解演習が大量に出て、毎日2時間ぐらいやっていたので、それは後々効いたかなと思います。高3の夏休み以降、英語を読むのが明らかに楽になりましたから。大学に入ってからは、小説を原書で読むとかぼちぼちやってましたが、3年の冬から4年の夏にかけて、有機化学のフルセットの教科書を原書で2冊通読しました。研究室に配属されてからは、研究に関係する英語論文を読むとか、総説を輪読するとか、常に英語文献に触れる環境だったので、その後は特に意識して英語を勉強することはなく、今に至っています。TOEICとか受けたことがないんですけど、ビジネス英語や時事英語に弱いし、リスニングがぼちぼちなので、かなり恥ずかしい点をとっちゃうんじゃないかな。
自分のことはともかくとして、英語があまり得意じゃない学生さんに英語論文を読ませてみると、読み方に共通のクセがあります。(1) 英文を全部日本語に訳してから、訳文を読んで理解しようとすること。(2) 日本語に訳す時に、文の構造を無視して機械的に後ろから順番に訳していくこと。(3) 単語や短いフレーズを日本語に直したあと、原文でのそれらのつながりを無視して「適当につないで意味の通る日本語に」しようとすること。これらはすべて、英文和訳をまるで暗号解読かパズルのように「解いて」いる、ということです。英語は暗号やパズルじゃなくて「ことば」なのですから、本来は「そのまま」読んで意味が理解できるもののはずなのに、そうしてないわけですね。
この状態から脱却するには、まずは構文解析ができないといけない。最初に主語と述語動詞を探して、基本5文型のどれに当てはまるか考えて、S/O/C のそれぞれ中心になる名詞・代名詞を特定します。次に、修飾・被修飾の関係を明らかにする。中心になる名詞と述語動詞以外の部分は修飾語・修飾句ですから、それがどこを修飾しているかを考える。ここまでやってしまえば、あとはそれぞれの名詞・述語動詞・修飾語(句)の意味を考えて、元の文章の構造通りに再構築すればいいわけです。日本語に直すと、結果として後ろから訳したのと同じになりますが、過程が全然違います。英語勉強法を説く人の中には、文法なんか要らない、という人もいるのですが、冗談言っちゃいけない。日本語の構文解析だって、小学校の国語でちゃんと習ってるんですよ。言語をまともに使えるようになるには、文法の知識は不可欠です。文法無視のカタコト会話と気合いとハッタリで世の中を渡る、というやり方は、技術の世界では全く通用しません。
勉強法の話に戻ると、やはり「長い文をたくさん読む」ことが必要だろうなと思います。とは言っても、何を教材にするかが問題です。文学作品(ハリー・ポッターとか?)は技術文書とは毛色が違いすぎるし、本物の技術文献は英語の教材としては読みにくくて辛いものが多いのです。やっぱり英字新聞とかになるんですかね。Chemical & Engineering News(アメリカ化学会の会員誌)も良さそうだけど、学部学生レベルだとハードル高いかな。いろいろ試行錯誤したいと思っています。つーか学生諸君、キミらが試行錯誤しろよ、って感じですが。