Bentham Science の雑誌2013/09/23(月)
Bentham Science のある雑誌から論文の査読依頼が来ました。ちょっと奇妙なのが、Editor じゃなくて Publication Manager から依頼が来たこと。普通、学術雑誌にはその専門分野の研究者が Editor として名を連ねていて、投稿した論文の査読を依頼するのは Editor の役目です。Publication Manager は出版社の事務方の人ですから、普通は査読プロセスが終わってから出版までの細かいやりとりを担当するものです。くだんの雑誌のウェブサイトを見ますと、Editorial Board に研究者の名前がずらりと並んでいて、普通の学術雑誌と同じシステムになっているはずなのですが、査読依頼が Editor を通らないのはおかしい。Editor は、査読者のコメントを見て論文の採否を決める役割ですから、科学的公正を期すために出版社サイドとは分離した立場でないといけません。
Bentham Science の名前は以前から知っていて、あまりいい印象は持っていませんでした。今回いろいろ調べてみると、面白い記事を発見。"Open Access Publisher Accepts Nonsense Manuscript for Dollars" この報告によると、コンピュータで自動生成したニセ論文を Bentham Science の雑誌に投稿したところ、査読者のコメントなしに受理されてしまったそうです。Bentham Science の他の雑誌では査読者によって却下されたそうなので、ちゃんとした論文誌もあるようなのですが、Bentham Science の雑誌にはダメダメなやつがある、というのは確かです。
今回私のところに来た雑誌は、査読依頼はしているわけですから、ここまでダメダメではありませんが、普通の編集プロセスを経ていない疑いは拭えません。Editorial Board には研究者の名前を並べているだけで、実質出版元だけで運営しているんじゃないかと。ただでさえ世の中には学術誌が多すぎるのですから、いい加減な運営をする雑誌は退場していただきたいものです。
今回の依頼は、丁重にお断り申し上げました。普通は査読を断る時は代わりの査読者候補を推薦するのですが、候補に挙げた人に迷惑がかかるといけませんので、それもしませんでした。ちゃんと査読するなら Editor を通して適当な人を探してね。