名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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自家製・融点測定記録装置2013/09/06(金)

融点測定はめんどくさい。何がめんどくさいかというと、測定中ずっとついていないといけない。しかも、一瞬目を離したスキにすっかり溶けているとか、「様子が変わったみたいだけど、これ分解してるの?」とか迷っているうちに真っ黒になっちゃったとか、いろいろ大変です。バブリーなアクティブな研究室では全自動の測定装置をばっちり導入しているんでしょうけど、融点測定のために100万円の装置はなかなか買えないわけです。そもそも、うちで扱っている化合物は、ポルフィリンにいろいろ置換基のついた誘導体とか、金属錯体とか、あまりちゃんと融点が決まらない種類のものが多いため、融点を測る機会はそれほど多くありません。

とは言っても、低分子の有機物で、きれいな結晶ができて、それが新規化合物だったりしたら、やっぱり融点を測る必要があります。それが、世の中にその物質を生み出した有機化学者の責任(の一つ)であるわけです。めんどくさいなあ、とぼやきながらも、重い腰を上げて融点計を引っ張り出すことになります。うちにあるのはヤナコの MP-500V というやつで、500℃まで測定できる高級機種ですが、測定中ずっと見てないといけないのは入門機と同じです。

「自動で融点を測定してくれとは言わんが、せめて溶けて行く様子とその時の温度を記録して、巻き戻して見られるようにできないか?」と以前から思っておりました。もちろんヤナコ様はそういうオプションを用意してくださっているのですが、これがまた結構なお値段であるわけです。手持ちのノートパソコンでできないんかいな、と鋭意検討した結果、なんとか目処が立ちました。

下図が「自家製・融点測定記録装置」の勇姿です。左の顕微鏡の上についているのは 28000 円で買った顕微鏡用 USB カメラ、右端の緑色のクランプで止めてあるのが普通の USB カメラ(3000円ぐらいだったと思う)です。

2つのUSBカメラの画像を同時にとりこむにはどうすればいいのか、相当悩みましたが、CamTwist というソフトウェアでできることがわかりました。これは大変面白いソフトで、2つの画像を合成したり色々なエフェクトをかけた上で、できた動画を仮想カメラとして他のアプリケーションに送ることができます。今回は、右の USB カメラで写したデジタル温度計の読みを、顕微鏡 USB カメラの視野内に合成しました。"Preview" ウィンドウの右下に映っているのが現在の温度です。残念ながら CamTwist は Mac のみのソフトウェアなので、Windows で同じことをやろうと思うと別のソフトを探さないといけません。

画像の録画は、QuickTime Player を使いました。Mac OS 10.5 の QuickTime Player 7 だと Pro ライセンスを購入しないと録画はできません。10.6 の QuickTime Player X なら最初から録画機能がついています。「新規ムービー収録」で、カメラとして CamTwist を選べば、CamTwist で合成した動画が録画できます。ただし、QuickTime Player X の場合、32 ビットモードで立ち上げないと、CamTwist をカメラとして認識できません。QuickTime Player X のアプリケーションの「情報」を Finder で開いて、「32ビットモードで開く」をオンにしておきます。

録画するとこんな風になりました。測定のあとで巻き戻して確かめられるのはたいへん便利です。これで融点測定がちょっと楽になりました。最初のセットアップがけっこう面倒ですけど。

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