Double Either Bond2013/08/28(水)
ChemDraw のマニュアルを読んでいたら、"Double Either Bond" なるものの記述がありました。
Double Either Bonds
To draw a double either bond, use the double either bond tool from the Multiple Bonds toolbar or:
1. Draw a bond using the Wavy Bond tool.
2. Click the center of the bond to create a double bond.
3. Click again to create a double either bond.
え、なんだこれ、こんな機能知らんかったぞ、と思って、さっそくやってみると、下のような二重結合ができました。
どうやら cis か trans か特定できない二重結合を表すための表記らしいのです。自分の知らないうちに有機化学で新しい標準ができたんだろうか、と少しあわてて、知人の有機化学者に尋ねてみたのですが、皆「そんなの見たことない」と言います。「普通は波線で表すんじゃない? いつもそれで論文書いてるけど、修正を要求されたことはない」、とも。波線というのは、この表記です。
Web で調べてみたら、こんな記事がありました。Double bond sterochemistry? Not yet solved... 情報化学 (Cheminformatics) 方面の人が使うようですね。計算機で情報処理するときには便利なのかも知れませんが、人間が見るための図を描くときには伝統的な波線表記の方がよいと思います。そもそも、double either bond で描かれたら何のことかわからない人が大半でしょう。私の知人も「学生が描いてきたら×つけそうだ」と言ってましたから。将来は変わるかも知れませんが、IUPAC の Recommendation に入りでもしない限りは、有機化学では使わない方がよさそうです。
ChemDraw も、マニュアルに一言書いておいて欲しいですねえ。「この表記は Cheminformatics では使われるが、通常の有機化学では一般的ではない」とか。まあ、誰もマニュアルなんか読んでないと言えばそれまでですが。