名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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研究紹介 〜人工光合成をめざして〜 (1/3)

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(初出:2013年7月13日)

人工光合成は実現できるか?

光合成は太陽光のエネルギーを用いて、水と二酸化炭素から酸素と炭水化物を作るプロセスです(図1)。炭水化物は高い化学エネルギーを持つ物質です。炭水化物を食べると、体にエネルギーが湧いてきますね。また、炭水化物を燃やせば熱が出ます。どちらの場合も、炭水化物に蓄えられた化学エネルギーが化学反応によって放出されているのです。光合成は、光のエネルギーを化学エネルギーとして「固定化」するプロセスと考えることができます。

図1.光合成の化学反応。

光合成はまた、地球上の炭素化合物の循環に深く関わっています(図2)。空気中の二酸化炭素は光合成によって炭水化物に変換され、それを原料としてさまざまな有機化合物が作られます。地球上の生物はその有機化合物を呼吸によって消費して、二酸化炭素に戻します。一方、人間は産業活動として化石燃料(石油・石炭・天然ガス)を掘り出し、それを消費して二酸化炭素を放出しています。このため、空気中の二酸化炭素濃度は少しずつ上昇しています。つまり、炭素循環のバランスが崩れている状態です。

図2.地球上の炭素循環。

人工的に光合成が可能になれば、再び炭素循環のバランスを取り戻すことができるでしょう。また、化石燃料の枯渇を心配することなく、持続可能な社会を実現できるでしょう。しかし、人工光合成は可能なのでしょうか?

植物の光合成の仕組みは、分子生物学の発展とともにかなり詳しくわかってきました。今では、光合成の化学エネルギー変換について、化学の言葉で語ることができるようになっています。しかし残念ながら、化学の力だけで光合成を再現することはまだできません。これを実現するためには、研究しなくてはならないことがたくさん残っています。

私たちは、光合成の中でも特に重要ないくつかの過程に注目して、それを人工分子で再現する研究に取り組んでいます。実現できている過程はまだまだ原始的ですが、人工の光合成を実現するための基礎知識を積み上げて行きたいと思っています。

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