大阪万博のボランティアで大学が単位を出すってホントなん??2024/05/02(木)
2025年の4月13日から10月13日まで開催予定の大阪万博について、「ボランティアに参加すると大学が単位を出す」という話がちらほら聞こえてくるんですが、ホントなんでしょうか??
本件についての公式の文書を探してみましたが、今のところ「大学コンソーシアム大阪」関連の以下の記事しか見つけられていません。
- 「特定非営利活動法人大学コンソーシアム大阪と連携推進に関する協定を締結」(2025年日本国際博覧会協会プレスリリース、2023/08/23)
- 「『学生ボランティアが活躍する大阪・関西万博』をともに考える」(PDF)(大学コンソーシアム大阪・地域連携サロン、2024/1/29)
「ともに考える」の文書を見ると、司会役である近畿大学の先生が積極的に発言されていますが、他の大学からの発言はわりと慎重だな、という印象です。少なくとも、今年の1月段階では、「検討はするけど、いろいろ問題があって実現は難しそう」という状況だったように見えます。
もともと、大学が授業科目に対して単位を認定するには、相当高いハードルがあります。正式な手続きについての知識はないのですが、学科のカリキュラム改正を検討した時の体験から推察するに、単位認定には責任教員が必要で、その教員は当該科目について十分な実績を持つ者でないといけないはずです。大阪には多数の大学があり、万博開催やボランティア活動を研究している先生もいらっしゃるでしょうから、その先生を責任教員にして科目を立てて、その科目の単位をコンソーシアム参加大学の学生が取得できるようにする、という流れであれば、技術的には単位認定できそうです。
でも、その単位は卒業に必要な単位にカウントできるんでしょうか? 大学の卒業要件は入学した時の学則で決まるはずだから、2025年度に新設する科目を卒業単位に換算するなら、2025年度入学の学生しか対象にならないはずです。上記の「ともに考える」文書の中で、ある大学の先生が「万博開幕時に大学生となる高校3年生においては、ボランティア募集がすでに終了しているタイミングとなっており、参加できないことになる。」と発言されているのは、このこととも関連するのかなと思います。
そのあたり、「文部科学省とも調整している」との発言もありましたから、通常のルールを超越した決定がなされるのかもしれませんが、そんなことをしてしまっては、文部科学省の信用は地に落ちるんじゃないでしょうか。「大学教育の質を保証せよ」ってどの口が言うねん、という話です。文部科学省の「ご指導」を受けて涙ぐましい思いで教育の質向上に尽力している大学関係者は、力が抜けてしまうでしょう。
あと、学費負担者(通常は学生の親御さんですね)は、学生が「授業料を払って万博ボランティアに参加する」という状況について、どのようにお考えなんでしょうか? 大阪万博が盛り上がるんだったらそれでいいんでしょうか。大阪以外の地域からご子息を大阪の大学に通わせている親御さんはどうなんでしょうか。
いろいろ考えるに、大阪万博のボランティア活動を単位認定する、というのは、大学としては「やっちゃいけない」ことだとしか思えないのです。今のところ、公式に単位認定を認めた大学がある、という話は聞いていません。大阪のメディア(カンテレなど)は、「大阪の大学は単位認定を考えているそうです!」という報道をしていますが、大学から正式に通知があるまではその話に乗らない方がいいと思うし、ガセネタで終わって欲しいと心から思います。