理系大学の「女子枠」2023/12/27(水)
いろいろ物議をかもしている、理系大学の「女子枠」。中日新聞が記事にしていました。
「理系大学の『女子枠』に思うこと かつて研究者を目指した記者は、なぜ怒りを感じたのか」(中日新聞 Web, 2023年12月24日)
そもそも、入学定員に特別枠を設けて、特定の属性の人を優先的に入学させる、という大学側の発想が、何を目指しているのかよくわからないんですよね。そういう制度を作れば、確かに「特定の属性の人」の割合を数字的に増やすことはできるでしょうけど、そのことに何の意味があるんでしょうか? 文部科学省が決めた数値目標を達成する? それは、入学機会の公平さを曲げてまで達成すべき目標なんでしょうか? なんか優先順位が違ってませんか?
記事中にある、東大の横山広美先生のご意見、「本来は高校で物理を選択する女子を増やさなくてはいけない」というのは、半分ぐらいは賛成なのですが、「物理」「女子」と限定せずに、「高校生の理系選択者を増やさないといけない」という話じゃないの?と思います。こう言い切ってしまうと、文系学部の先生から反発を買うでしょうし、そもそも私自身、人文系の学問もとても大事と考えています。でも、日本の国力が衰退の一途をたどっている今、その傾向を少しでも食い止めるためには、モノやITサービスを「作る」人材を分厚く育てることが急務に違いありません。なんだか「富国強兵」の時代に戻ったようで残念な気持ちもあるのですが、これが現実でしょう。
記事ではメディアの責任についても自問されています。まあ、高校生は新聞なんて読んでないし、下手したらその親世代だって読んでませんから、直接影響を及ぼすことは難しいでしょうね。私がメディアのみなさんに期待したいのは、まっとうな科学と、いんちきなニセ科学を、嗅ぎ分ける感覚です。理路整然と、まっとうな科学を賞賛し、いんちきなニセ科学をやり玉に挙げる記事を書き続けていただければ、「科学的な素養を持つ」ことの価値が世に伝わっていくでしょう。自分が研究者にならなくても、そういう記事を書ける人になりたい、と願う若い人が出てくるかもしれません。この記事を書かれた住彩子記者の今後のご活躍に、大いに期待したいと思います。