名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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阪大医学部がこれではあかんでしょ…2017/09/25(月)

阪大医学部教授・仲野徹先生のツイートを見て、ちょっと凹みました。

元々の記事は、「『スーパーグローバル』大学創成支援事業:二兎を追うものは一兎をも得ず」です。筆者のスティーブン・ギブンズ氏は、米ニューヨーク州弁護士で、長く東京で活動され、現在は上智大学法学部で教授職に就かれています。上で引用された「日本人の学部生」に対するコメントは、ご自身の教壇での経験を踏まえたものと思われます。それに対して、阪大教授の仲野先生も同意するほかない、と。阪大医学部の学生って、そんなに講義に出ないんですか…。

念のために書き添えておくと、仲野先生の研究室ウェブサイトや他のツイートを拝見すると、先生ご自身は「さぼっている奴は許さない」という姿勢で教育に臨んでおられます。試験は相当厳しいようだし、講義にもおそらく熱心に取り組んでおられるはずです。それでも学生を振り向かせることは容易ではない。「大学にこういった視点はまったくありません…」という先生の嘆きは、「教員が一人でできることには限界がある、やはり大学全体として『学生に真面目に授業を受けさせる』という取り組みが必要だ」という意味だと理解しました。

中堅以下の大学は、出席についてもっと厳格です。授業で出欠をとるのは当然だし、ある回数以上休んだら試験の受験資格がなくなります(欠格)。うちの大学では欠格の最終判断は担当教員に任せられてはいますが、原則「欠格になる」のが標準です。上位の大学になるほど、「学生の自主性を重んじるべきだ」という教員側の考えが優先されて、「欠席が多いと欠格」などという厳しい姿勢はとられなくなるものと思われます。

自主性を重んじるのは美しい考え方なのですが、それを優先するなら、「講義を聴くのと聴かないのとで理解度が大きく変わる」講義をしないといけない。上位大学の学生は頭がいいので、「そこそこ」の講義では教科書を読むのと大して変わらないレベルと感じるでしょう。だから「別に講義なんか聴かなくてもよくね?」となってしまうわけです。しかし、質の良い講義を提供するためには、準備に多大な労力が必要です。上位大学の先生方は軒並み非常に忙しいので、講義にそこまで手が回らない、というのが正直なところなのではないでしょうか。

簡単な処方箋があるわけではありませんが、「学部教育の充実なくして大学の質の向上はあり得ない」という認識は持っておきたいものです。といっても、研究もやれ・プロジェクトの提案や報告もやれ・海外交流もやれ・学部教育もちゃんとしろ、では、現場はパンクしてしまいます。現場で質のよい教育が提供できるように、運営側(大学理事会とか)は知恵を絞っていただかないとな、と思います。上(文部科学省)ばっかり見てないでね。

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