名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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「9浪はまい」さんの体験談2024/07/15(月)

ライターの濱井正吾さん。9浪して早稲田大学に入学し、「9浪はまい」という名でSNS等で活躍し、教育関連の連載記事なども持たれています。ご存知の方も多いでしょう。その濱井さんが、体験談を語られた記事が、文春オンラインに掲載されています。下のリンクは、全3回のうちの2回目です。

なんというか、読んでいて涙が滲んできました。濱井さんの体験は、希望の光だと思うのです。幼少時、自分の知っている範囲に「大学生」など一人もいなかった、大学なんて自分とは無縁のものだと思っていた。ところが、高校時代にのめりこんだオンラインゲームの仲間に「大学行けばええやん?」と言われて、初めて自分にそういう選択肢があることに気づいた。とはいっても、その時の濱井さんにとっては、大学に進学するのは「イジめた奴らを見返したい」というような、あまり高尚とは言えない動機でしかなかった。でも、濱井さんの場合、「大学を目指す、大学に行くことで初めて見えてきた」ことが、すごくたくさんあったのです。詳しくは、記事をお読みください。

文春オンラインの記事のタイトルには、ご家族や地元の方への悪意が透けて見えます。この悪意は、文春の編集者のものというよりは、読者の潜在意識を代弁しようとしているように見えます。しかし、連載の最後の部分で、濱井さんがご両親のサポートへの感謝の気持ちを述べられていることを見逃してはいけません。濱井さんの体験は、こんな表面的なタイトルでは表しきれない複雑なものだし、そこから学べることは多くあります。

濱井さんが地元で感じた違和感は、結局のところ価値観の違いによるものですが、地元のみなさんの価値観もまた尊重されるべきものです。価値観というのは、人それぞれが生きてきた経験の上に成り立っているものなので、価値観を否定することは、その人の経験、ひいては人生そのものを否定することになるからです。ただ、重要なことは、「新しい経験をすることで、価値観はアップデートできる」ということです。濱井さんはそのことを、大変な犠牲を払った上で、身をもって示してくれたわけです。そして、その体験をこのように発信してくださっていることに、感謝したいと思います。

私は、このインタビューを通して、濱井さんの「優しさ」に触れたと感じています。濱井さんは、他人の優しさを敏感に感じ取れる人なんですね。ゲームの仲間の「大学行けば?」という一言への反応もそうだし、最初に推薦で入学した大学でインカレサークルに入った時に「京大や同志社の学生は優しい」と感じたこともそうです。(個人的には、京大については、他人をひどく見下す人間が一定数いるので判断を保留しますが、同志社の学生は優しい人が多いと思います。)他人の優しさって、自分自身が優しさを内包していないと見えてこない。だから、濱井さんも、いろいろこれまでこじらせてきたけど、本質的に優しい人なんだろうなと思います。だから、「かつての自分のような子供がいたら、どんな言葉をかけますか?」という質問に対して、こういう答えが出てくる。

……たぶん、私が何か言うよりも、相手の話を聞くと思います。その子にとって私は“よく知らない大人”のひとりだと思うんですよ。だから、まず対等な関係で話を聞くことで「この人はもしかすると、周りの大人とは違うかも」と思ってもらいたい。

濱井さんは、これから大学院に進学して、教育についてさらに学ぼうとされているそうです。濱井さんが「最終目標」として話された、下のくだりに心から共感します。

「生まれた環境で人生が決まってしまう」という状況を撲滅したいんです。そこが、自分が一番憤りを感じて悔しかったところなので。幸い私は抜け出すことができましたが、この社会にはまだ同じような人が大勢いる。その人たちが、自分の頑張り次第で人生の行き先を選べる世の中に変えたいと思います。

今後の濱井さんのご活躍に期待しています。私もできることをやりたいと思います。

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