名城大学大学院理工学研究科 応用化学専攻 (平成29年度設置) 名城大学大学院理工学研究科 応用化学専攻 (平成29年度設置)

Q&A

お断り:このQ&Aは、応用化学専攻の永田が書いています。応用化学専攻の他の教員もチェックはしていますが、基本的に文責は永田にあります。個人的な見解も混ざっていますので、ご留意ください。

進学のメリット・デメリット

大学と大学院の違いがよくわからない。大学院って何をするところ?

一言で言えば、大学院は「大学よりも高度な勉強をするところ」になるわけですが、「勉強する」ということの意味合いがだいぶ変わってきますね。

大学では、多くの講義で「教科書」があって、その内容を理解し自分のものにすることが「勉強する」ということになります。ところが、大学院での勉強では、必ずしも「教科書」があるとは限りません。大学院での勉強は、学問の最先端につながっています。学問の最先端では、「まだわからないこと」や「いろいろな説があって確定していないこと」がたくさんあります。こういった事柄は、まだ教科書には書けないのです。

科学や技術の最先端で活躍するためには、教科書に書かれていない「まだわからないこと」に対して自分なりの考えを持った上で、実験を重ねてその考えを修正しながら、目指す結果に向かって自分で道を切り拓いて行かないといけません。大学院は、そういう道を切り拓くためのトレーニングをする場所だと考えて下さい。

大学院で学ぶか、就職して稼ぎながら学んで行くか、どちらがいいのか?

「稼ぎながら=仕事をしながら学ぶ」のと、「大学院で学ぶ」のは、「学ぶ」目的が大きく違います。「仕事をしながら学ぶ」場合は、仕事での「成果」を上げることが最終的な目的ですから、それに必要なことを選んで身につけることになります。それに対して、大学院で学ぶ場合は、「学術的な成果」が一応の目的ではあるのだけれども、そこに至る「過程」の方がずっと重要視されます。この「過程を重視する」という姿勢が、いわゆる「研究開発力」につながるのです。

少し具体的な想定をしてみましょう。大学院の研究者が、ある有用な実験結果を得たとします。そうすると、次のような議論が研究室内で戦わされます。

こういう議論を重ねて、一つ一つの実験結果に対して、「現時点で考えられる最も合理的な解釈」を探し求めるのです。この作業は、学問として非常に重要であると同時に、「まだ誰も知らない次の新しい現象」を発見するための基礎になるものです。「研究開発力につながる」というのは、そういう意味です。

このような「合理的な解釈を探し求める」作業は、必ずしも金銭的な利益にはつながらないため、企業の業務の中では時間をかけることがなかなかできません。企業の現場で「稼ぎながら学べる」ことはもちろん多くありますが、大学院で学ぶような「研究開発につながる能力」とは内容がかなり違ってきます。

院卒の方が学部卒より生涯年収が高いと聞きましたが、ほんと?

元ネタはこの論文ですね:「大学院卒の賃金プレミアム」(柿澤ほか、内閣府経済社会総合研究所、2014年6月)。この論文によれば、学部卒と院卒では、生涯年収の期待値が男性で 4846 万円、 女性で 4334 万円の差があり、いずれも院卒の方が高い、となっています。平たく言えば、大学院に進学すると就職が2年遅くなり、学費を2年分払わないといけないわけですが、それを補って余りある生涯年収差がある、ということになります。もちろんこれは「期待値」(平均値)での話ですから、あなた個人の生涯年収がどうなるかはわかりません。

院卒の方が生涯年収が高い理由については、はっきりしたことはわかっていません。一つ言えそうなことは、院卒の人は学部卒と比べて「正解のない課題に対して何らかの答えを提案する」能力が高いと期待されている、ことではないでしょうか。現代は、どんな産業でも流動化が激しく、常に難しい状況判断を迫られる時代です。このような時代で生き残って行くには、得られる限りの情報を吟味して、その時点で最善と思われる手を打ち続けることが必要です。大学院でのトレーニングは、まさにこのような知的作業を行うものです。大学院で学んだ専門知識が直接役に立たなくとも、そこに至る過程で得た知的能力は生涯にわたって生かすことができるはずです。

名城の大学院卒でも研究職に就けますか?

2019年に卒業した応用化学専攻の第1期生には、研究職として就職した人がたくさんいます。彼らが今後どういうキャリアを積んでいくかは時間がたたないとわかりませんが、例えばお隣の材料機能工学専攻では、研究職で活躍している人がたくさんいます。数は少ないけど、博士課程まで進学して研究職に就いた人もいます。

うちの院生の就職活動を見ていると、大手の化学系企業で全国から化学系院卒者が応募してくるようなところでは、なかなか勝ち抜けてないかなという印象はありますね。でも、学歴でフィルターをかけられているのではなくて、競争のチャンスはもらえているように思います。院卒生は学部卒生より母集団が小さいので、企業の方も可能性を広げて人を探しているのではないでしょうか。ガチで実力をつければ、イイ線いくんじゃないかと思います。ガチで、だぞ。本気でやるんだぞ。

第1期生は、化学系の企業に就職した人が半数以上を占めました。けれども、本専攻で学ぶ人にぜひ意識しておいて欲しいことは、「一見化学系でない企業でも活躍の場があるよ」ということです。「修了後の進路」にも書かれているように、例えば自動車関連の企業で、主要な業種は機械系なんだけれども、化学系の人材が欲しい、と考えているところはたくさんあります。化学というのは非常に裾野の広い学問ですので、影響力の及ぶ範囲が広いのです。また、そのように「異業種の人材」を求めているところは、企業の文化として「攻め」の姿勢があるということですから、将来性にも期待が持てるでしょう。

経済的支援

学内の奨学金制度について教えて下さい。

学内の大学院生支援制度は、次の2つがあります。どちらも返済は不要です。

EA (Educational Assistant), TA (Teaching Assistant) は、みなさんが学部で受けていた講義で「お手伝い」に来ていた院生の仕事です。年間最大10万円程度の収入になります。

学業優秀C奨学生は、名城大学大学院の支援制度です。これまでの実績によれば、7割程度の院生が対象になり、金額は30万円です。対象者の選抜は各専攻ごとに行います。応用化学専攻での選抜方法は、大学院講義の成績と、学会・論文発表等の実績を考慮して順位をつけることとしています。

研究室での生活

大学院生ってどんな生活をしているのですか。

基本的には、自分の「研究テーマ」を持っていて、それを進めるための実験研究を日々行っています。実験研究というのは、下のようなサイクルのくり返しです。

「課題を認識(特定)する」とか「実験を計画する」とか、さらっと書いてあるところが実はくせ者で、ここに非常に多くの労力をつぎ込むことになります。教科書や先行研究の論文をたくさん読んで、自分の頭の中に関連分野の基礎知識をしっかり蓄えてから、自分が取り組んでいるテーマについてよくよく考えて、指導教員に自分で提案できるレベルまで持って行かないといけない。だから、ちゃんとした院生はみな、ヒマさえあれば論文や専門書を読むか、ノートに向かって何やらメモ書きをするかしているはずです。

アルバイトとの両立は可能ですか。

まあ、やらないで済むならそれに越したことはないんだけど、実際問題必要な場合は多いでしょうね。指導教員と相談して、うまく時間をやりくりして、上手に両立させて下さい。あまり長時間のアルバイトが必要なようだと、両立は厳しいかも知れません。

大学院でも講義はあるのですか。

ありますよ。「学位取得要件」を見て下さい。「専修科目」というのは、研究室で定期的に行われるセミナーなどのことですが、これとは別に、講義科目として22単位以上を取得する必要があります。講義科目の一覧と単位数については、「開講科目」から各専修分野のページをたどってみてください。

学会などへの参加について

学会に参加するのはいつ頃ですか。

まずは学会で発表できるような結果が出ることが前提です。これは研究テーマによるのですが、早い人だと4年生の秋ぐらいにもう結果が見え始める場合もあります。それだと、4年生の間(3月とか)に学会に参加することもあり得ます。

できれば、修士1年の終わりまでには一度は学会発表ができるといいですね。そこからの就職活動の手応えがだいぶ違って来ますから。

学会に参加する費用は出してもらえるんでしょうか。

学会に参加するのに必要な費用は、参加登録費・交通費・宿泊費です。これらは、指導教員の裁量で研究室の経費から支出することができます。国内の学会ならたいてい問題ないでしょう。国際学会の場合は、ケタが一つ上がるので、全額支出は難しいことがあるかも知れません。

あと、国内の学会の場合は、主催団体の学生会員にならないと発表ができないケースがあります。この会費は研究費から支出はできないので、自腹を切っていただく必要があります。例えば日本化学会の場合は、学生会費は年6,000円です。

学会発表は英語でやるのですか?

必ずしもそうとも限りませんが、最近は国内の学会でも英語のセッションが増えてきているようです。「発表は英語でやるのが普通でしょ」ぐらいの感覚でいないと、就職戦線で他大学の院卒と互角に戦えないかも知れません。大学院に進めば、英語の論文を頻繁に読むようになりますから、英語での発表も案外何とかなるものです。

院入試について

院入試はどのぐらいのレベルなのですか?

その質問には答えられません! …けど、だいたいの目安を示しておくとすると…

学内推薦の基準について知りたい。

入学者選抜」のページにこれまでの実績を書いておきました。実際の基準は年ごとに決定します。4月に入学センター下の掲示板で公開されますので、それを見て下さい。

試験科目でどれを選択するか迷っています。

希望する研究室の分野によって、1科目が指定されています。他の2科目は自分で選択するわけですが、希望する研究室の教員に一度アドバイスを求めておいた方がよいでしょう。