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Quantum Sensor(量子センサー)

 量子センサー

 ナノスケールの物質の信号を検出するセンサーとして,量子センサーが注目されています。中でも、ダイヤモンド窒素-空孔中心(NVセンター)は常温、常圧下で安定的に動作する固体量子センサーであり、生体適合性が高いということから量子生命科学の分野で関心が高まっています。
 NVセンターは,ダイヤモンド結晶中の炭素原子の1つが窒素原子1つに置換し,その置換窒素に空孔が1つ隣接した構造です。この構造中に電子を1つ捕らえると、緑色光(λ=532nm)を吸収し、赤色(λ=637nm)の蛍光を発するという性質があります。
 窒素-空孔のペア(NV)に電子を1つ捕らえている状態をNV-、そうでない状態をNV0と呼びます。



 実験装置

 電子ビーム励起プラズマ(EBEP) 

 本研究で用いる電子ビーム励起プラズマ装置は、“放電領域”、“加速領域”、“プラズマ生成領域”の3つの領域で構成されています。放電領域は電子を放出する電子源で、電子の量を制御することができます。加速領域は、極板間の電圧を制御することで電子の持つエネルギー量を任意に変化させることができます。プラズマ生成領域は、先述の電子によってチャンバー内のガスを解離・電離させプラズマを発生させます。


















 現在研究しているテーマ

 当研究では電子ビーム励起プラズマ(EBEP)装置を用いて、より蛍光強度の高いダイヤモンド量子センサの形成を目標にしています。ダイヤモンドに照射する電子の量とエネルギーを任意に変化させられるというEBEPの特徴を活かし、低エネルギーの電子ビーム照射によって、表面付近により多くのNV centerを生成すること、ダイヤモンド表面に終端を生成することによる表面付近のNV centerの活性化について研究しています。

・低エネルギー電子照射を利用したNVセンターの形成

 本研究ではμT領域の感度を持つ量子センサーの開発に向けたNVセンターの形成方法の評価を行いました。電子ビーム励起プラズマを用いて、ダイヤモンドに対して空孔を形成することのない低エネルギーの電子照射を行いNV-の蛍光量の変化を測定しました。得られた結果から、低エネルギーの電子照射がNV-の蛍光量を増加させる傾向がられました。