化学反応論 (2019年度後期)
第7回疑問点など
逐次反応の活性化エネルギーのスライドで、「全体の活性化エネルギー=Ea1 + Ea2」が厳密に成り立つとは言えないのはなぜですか。
「近似的に成り立つ」のは、第一段階が「強く吸熱的な前駆平衡」である場合です。この場合は、全体の反応速度定数は「第一段階の平衡定数×第二段階の速度定数」となります。
強く吸熱的な前駆平衡の場合は、遷移状態は生成系と近いので、正反応の活性化エネルギーは生成系と出発物質のエネルギー差とほぼ等しくなります。したがって、平衡定数=exp(-Ea1/RT) が近似的に成り立ちます。
第二段階の速度定数がアレニウス式に従うと仮定すれば、全体の速度定数は exp(-Ea1/RT)×Aexp(-Ea2/RT) = Aexp(-(Ea1+Ea2)/RT) となります。
この議論は、活性化エネルギーと遷移状態の自由エネルギーを混用しており、論理的には穴があります。ですから、「近似的には成り立つ(こともある)が、厳密には成り立たない」というのが一般的な説明です。
圧力鍋の反応速度で、圧力の効果は考えなくてよいのですか。
反応速度定数の圧力依存性は一般には小さいので、この程度の圧力変化ではほとんど効果はありません。
もちろん、気体同士の反応の場合は、圧力が変わると「濃度」が変化するので、反応「速度」は変化します。しかし、反応「速度定数」はほとんど変わりません。高校化学で、よく気体の分圧を変えた時の反応速度の変化を計算しますよね。その場合も、「速度定数」は一定として計算していたはずです。通常の圧力の範囲では、この近似は十分に成立します。
さらに、圧力鍋の反応は、溶液中の溶質同士の反応です(気体と反応させる料理って何かありますか? あったら教えてください)。従って、圧力が変化しても濃度はほとんど変わらないので、圧力の影響はごくわずかです。