名城大学理工学部 応用化学科 永田研究室
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ネット検索をうまく使うには2022/12/26(月)

現代の情報化社会では、ネットで検索すれば何でも見つかる、ということになっています。少し前までは、「知識はネットで調べればよい、だから記憶偏重の詰め込み教育はいらない」と熱心に説く人をよく見かけた気がします。最近あまり見かけなくなったのは、ネットには無価値な情報やでたらめな情報が非常に多い、ということが認知されてきたからでしょうか。「フェイクニュース」や「エコーチェンバー現象」という概念もだいぶ浸透してきました。そうはいっても、情報収集の道具として、インターネットは依然として強力です。うまく検索を使えば、自分の見識を大きく広げることができます。

ここで注意すべきなのは、「うまく検索を使えば」という但し書きです。この9文字が意味するところはとても重いのです。問題点は、主に2つあります。1つは検索するときのキーワードの選び方。もう1つは検索結果の読み方です。

キーワードの選び方がまずいと、欲しい情報がなかなか出てきません。たとえば、私が研究室で学生さんと議論していて、「じゃあ、これ調べといて、次の時に報告してよ」と議論を切り上げることがあります。ところが、私が実際に検索して1分で見つかった情報が、1週間経っても見つけられなかったりするのです。「調べたけどわかりませんでした」という報告を受けて、えーなんでや、こんなん1分で見つかるやろ、とついヒートアップしてしまいます(反省)。

実際に検索を一緒にやってみて、キーワードの選び方を学んでいく必要がありそうです。もちろん、最終的な目標は「自力で必要な情報にたどりつけること」ですから、「必要な情報」から「適切なキーワード」を自分で編み出す方法を学んでもらわないといけません。これはなかなか難しくて、まだうまい誘導方法が見つけられていません。今後の課題です。

もう1つの「検索結果の読み方」については、「文章を読めるかどうか」が大きなポイントになります。たとえば、最初の段落で挙げた「エコーチェンバー現象」がわからないとします。ネットで検索すると、Wikipedia の記事がヒットします。

エコーチェンバー現象(エコーチェンバーげんしょう/反響室現象、英: echo chamber)とは、自分と似た意見や思想を持った人々が集まる場(電子掲示板やSNSなど)にて、自分の意見や思想が肯定されることで、それらが正解であるかのごとく勘違いする[1]、又は価値観の似た者同士で交流・共感し合うことにより、特定の意見や思想が増幅する現象[2]。閉鎖空間で似た者同士で意見をSNSで発信すると自分と似た意見が返ってきて増幅していく状況を、閉じた小部屋で音が反響する物理現象から例えたものである[3]。

Wikipedia - 「エコーチェンバー現象」(2022年12月26日閲覧)

どうですか。かなり堅い文体で書かれています。このブログの読者ならどうってことない文でしょうけど、一般的には、最初の2行ぐらいで読むのをやめる人がかなり多いんじゃないかと思います。こういう人は、「あーなんか難しいこと書いてある、もっとやさしい解説ないかな?」と次を探し始めます。もちろん、「難しい文章は正しくて、やさしい文章は間違っている」わけではないのですが、「難しそうな文は読まない」という行動パターン自体が問題なのです。玉石混交の情報源から正しい対象をすくい上げるためには、母集団が大きくないといけません。「難しい文章」を排除していると、母集団が小さくなりますから、正しい対象にたどりつく確率が下がります。

「情報の母集団を大きくしなければいけない」という観点から、さらにもう一つの問題点が見えてきます。本学の学生さんの情報収集行動を見ていると、大きな障害になっているのが「英語の文を読むハードルが高い」ことです。日本語の情報よりも英語の情報の方がはるかに多いので、「英語の情報」を忌避していると、情報の母集団が大きくなりません。情報収集能力は、人生の「あらゆる局面」でカギになります。情報収集能力で遅れを取るということは、あらゆる局面で遅れをとる、ということを意味しています。だから、英語情報へのハードルは何としても下げておかないといけません。機械翻訳でも何でも使って、英語情報を積極的に取りに行く姿勢が大事ですね。

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