新城 蔵リノベーション

新城での、蔵の改修。
学生達が2年がかりで構想し、自力改修を続けています。
昨年は外壁を補修し、本年は内部に手を入れました。

クライアントの中島さんは、子ども塾の活動をこの黒谷家で続けて20年以上。
蔵改修にあたり、蔵の持つ暗さや、湿気のある空気感を、子ども達に遊びながら体感してほしいとこだわってこられました。
しかも、中島さんの言う遊びとは、遊具的なものではなく、密やかにこもって悪さをするような遊びのことのようでした。

3階建ての珍しい蔵。
まだ全体構想に対して4割ぐらいの完成状況ですが、先日の鳳来寺山もみじ祭では、蔵開きが行われました。

地域の方々が中に入って、新城の人々の暮らしに関するドキュメント映像が上映されました。
こうして、地域の人々に入っていただくのは嬉しい一歩でした。

設計は、下記を目指しています。
数少ない壁と床の挿入で、従来の物のための蔵を、人が過ごすための蔵に転換すること、そのために分節と繋がりを若干編集しなおすこと。
蔵の持つ暗さや、小さくさし込む光を大切にして、新しく挿入した素材が光を反射し伝播していくこと。
川から聞こえる水の音など、自然音を感じる場とすること。

挿入された床はしっとりとして、古い蔵に負けない存在感を放っています。
素足で歩いても、寝転がっても心地よく、土足で使われてきた蔵に、ベタ座して過ごせる密かな転換をもたらしています。

こうして比較的滞在しやすく開かれた場となった1階に比べて、2階は昔からの品々が埃と共に雑雑と残っており、地下には、更なる暗闇が残っているのを、また手を加えていくことになります…。
中島さんは「子どもは蔵に入ると何をしてるんだか、こそこそと何時間もそこでいたりするものだ」とおっしゃるので、早く子どもがこの蔵で遊ぶ姿を見たいなと待ち遠しく感じます。

ここまで、もみじ祭の蔵開きを迎えるまでに、望月工務店の望月成高さんが、根気強くボランティアで日々施工指導してくださいました。感謝してもしきれません。
丹念な職人気質の仕事に触れた学生達は、それぞれの胸のうちに何かを感じた経験となったことと確信しています。