研究内容

生物機能と分離技術を駆使した高度水処理・水資源循環利用技術

生物の特殊機能を利用する高度水処理・循環利用技術の開発

自然界では、人によって汚染された水が、生物の環境対応能力により浄化される現象がみられます。一般的には、生物の特殊な能力は限られた環境下でのみ現れ、人工的に水処理に利用することは難しい。そこで、生物処理と分離技術を組み合わせることにより、生物の特殊機能を利用可能な環境を創製し、有毒物の無毒化など、高度処理を実現し、再生水として利用する技術の開発を行っています。

分離技術の高精度化・高機能化による高度水処理・循環利用技術の開発

汚染水から汚染源を分離する方法として、濾過、沈降、遠心分離、凝集、吸着、抽出、晶析などの様々な技術があります。これら分離技術の高精度化あるいは高機能化により水処理の性能を飛躍的に向上させ、処理水を循環利用する取り組みを行っています。

食品・菌・酵素を有効活用する膜利用型廃水処理プロセスの開発

白色腐朽菌(カワラタケ)

特殊な能力を有する微生物として、白色腐朽菌を用いています。白色腐朽菌は、様々な残留性有機汚染物質(POPs: Persistent Organic Pollutants)、および医薬品や生活用品を由来とする化学物質(PPCPs: Pharmaceuticals and Personal Care Products)などを分解できることが知られています。また、白色腐朽菌は、漢方薬や健康食品として用いられており、カワラタケから抽出される多糖類のβ-グルカンには、抗腫瘍効果が認められ抗がん剤としても利用されてきました。

白色腐朽菌を最大限に活用する廃水処理プロセスでは、微生物フリーの環境を作ることができる分離膜を用いて微生物の機能発現に必要な環境を創製しています。その他に3つの特長があり、第1に白色腐朽菌による分解酵素の産生に必要となる栄養源に、食品廃棄物を利用します。第2に白色腐朽菌が増殖し余剰菌が発生した場合に、高圧圧搾操作により超高度脱水し、搾出液から生理活性物質を回収、そして脱水後の余剰菌は固形燃料として利用します。第3に分解酵素を含む培養液を精製することなく、そのまま汚染水の処理に用い、酵素を処理槽内に動的固定するために、分子量の大きな酵素と分子量の小さな環境汚染物を分離する限外濾過膜を設置したメンブレンリアクターを構築し、分解酵素を有効的に利用します。すなわち、食品・菌・酵素を有効活用し、更に処理水の再利用も視野に入れた膜利用型の廃水処理プロセスです。

  
廃水処理プロセス

超高度脱水技術による汚泥の固形燃料化

生物を用いる水処理法は、活性汚泥法に代表されるように、広く浸透しています。生物を用いるメリットが多くあるものの、大量の余剰汚泥の発生といったデメリットが問題となっています。省エネルギー的な機械的分離操作で汚泥の高度脱水を実現し、燃料として利用する画期的な技術の開発を行っています。

汚泥の処理では、高性能な高分子凝集剤を用いて粗大なフロックを形成させ、できる限り高速で脱水するのが、現在最も普及している手法です。しかし、この方法ではたとえ高圧を作用させても強固なフロック内の水分の除去は困難で、低含水率ケークが得られないという致命的な欠点を有しています。本研究では、この欠点を克服できる革新的な手法として濾過ケークの破砕という斬新なアイディアを盛り込み、これと超高圧圧搾を複合するという新たなシステムを提案します。一般的には、微生物細胞内の水分は圧搾における液流動に関与しないため、高度な脱水は難しいですが、フロックの崩壊と細胞に傷を付ける程度の弱い破砕操作を導入することで後段の超高圧圧搾における脱水速度と脱水度が極めて大きなものとなるように調整することができます。

汚泥脱水プロセス